「REKI」デジタル作画行程インタビュー
2014年度経産省の海外展開マンガ等のサイマル化による、デジタル制作工程の整備に係る調査にマンガ家として委員に参加し会議に出席、意見交換、又制作のやり方等聞き取りを受けました。(報告書より一部抜粋 インタビュー:2014年11月5日)
□デジタル作画に取り組まれたきっかけは?
――1999年に手塗りでは表現しきれないものに挑戦したくてパソコンやペンタブレットやスキャナーなどを導入しました。
本格的にデジタル漫画制作に取り組んだのは、2005年、講談社のweb雑誌『MiChao!』(ミチャオ!)での連載がきっかけでした。当時はカラーでデジタル配信をするのがどういうことなのか、一人の作家がカラーマンガの連載を請け負う大変さを、誰も理解していませんでした。結局、色塗りは外注に出さないと手におえないということに落ち着いて行きました。でも、外注に出すとどうしてもイメージやクオリティに納得がいきません。(2005年当時)。作家が本当にカラーで表現したいものを制作しようとすれば、月に10数枚程度が限度で、とても連載にならない。その格闘の日々でした。
当時はレイヤーは統合して一枚の画像にして納品していましたけど、続けていくうちにデジタルならではの表現をするにはどうしたらいいか、そのためにはどのようにレイヤーに分けた方がいいとかなど、様々なことを経験を経て行くうちに色んな事を学びました。そうした実験の時期を経て思うことは、効率化などもある程度、時間をかけて様々な事を経験して初めて語れるということです。(この会議が漫画のサイマル化による効率化に関しての会議でしたのでこのような回答になっております。)
□姫川先生は海外出版社とのコラボを積極的にされていますね。
――現在は、2014年初めから2015年前半まで中国の出版社で作品を連載していましたが、中国以外の掲載権利は作家に置く契約を結んでいるので、同じ作品をアメリカや他の国でも展開するための準備をしています。紙の出版ですが、制作はデジタルです。漫画家として年間活動する中で、仕事を失いそうになった経験もありますが、海外とつながっていく契機になった時期は、ちょうど年ごろの紙メディアからデジタルへの移行期でした。出版社が若い作家を使いたいということで、古い作家をどんどん切っていった時期で、私たちも一時期仕事を失いかけました。その時に、既にグローバル展開されている海外で非常に人気のある任天堂ゲーム『ゼルダの伝説』のコミカライズをしていた事等から海外からオファーが来て、中国やアラブや欧州との仕事が増えていきました。文化が違ってもマンガを知らなくても子どもから大人まで読めるという海外からの声を貰う様になり、自然の成り行きでそちらにシフトしていったのです。中国では今、多くの出版社があります。
紙媒体だった漫画も日本同様今はアプリで漫画を読む時代になりつつあるようです。先方の出版社は日本の作家をとてもリスペクトしてくれていますが、でも、日本の作家がすぐに彼らと仕事ができるかというとまだ大変だと思います。
中国事情もめまぐるしく変化しているのです。
□海外向けの作品の場合、作家自身がカラーリングするケースもあれば、出版社や配信事業者などが代行するケースもあるようです。姫川さんの場合はどうしていますか?また、海外向けの作品で注意している点はなんでしょうか?
――海外作品はカラーが主流なので、出版社側でも彩色の環境を整えているケースが多いです。でも、私たちは、フィニッシュワークは作家自身が行いたいと考えているので、最終的なカラーリングは自分たちでしています。カラー原稿は作家性が前面に出やすいと思います。そのため、モノクロ原稿であればトーン作業はアシスタントに任せられますが、カラー原稿は基本的に作品に責任を持つ漫画家が仕上げたいと考えています。ただし、月産で24〜30枚が限界ですね。
海外で好まれる色味は非常に微妙で、国によって違ったりするため、作家自身もその国の事情を知っておくと便利だと思いますが、さほど神経質になる事はありません。文化は一応理解しますが、特に物語に反映させずストーリーはシンプルに普遍的なものを扱う事が多いです。海外向けの作品では、多言語に対応する必要があるので、フキダシと描き文字と絵と3層のレイヤーに分けて制作および納品することが最低限注意していることです。ただし、今後国内でもモーションコミックの普及などから、レイヤー分けは必須かと思います。